中国人民元の取引の基礎知識と取引のポイント

中国人民元は中華人民共和国の法定通貨で、同国の中央銀行である中国人民銀行が発行しています。2010年に日本を凌ぐGDP(国内総生産)を達成して世界第2位の経済大国となっているだけに、中国人民元の国際的な取引も活発化しています。

中国人民元の歴史

中国人民元と呼ばれていますが、正式名称は「人民幣」で、実際には日本円の「円」の旧字体である「圓」がその通貨単位です。便宜上、もっと画数が少なくて発音が同じ「元」の字が用いられています。

したがって、中国人民元の紙幣には「圓」の字が記されています。なお、「圓(元)」の補助単位には「角」と「分」があり、1元=10角=100分という関係になっています。

中国人民元は1948年の中国人民銀行設立とともに発行されるようになり、当初は中国共産党の支配地域で流通していました。そしてその翌年、中華人民共和国の建国によって全土で用いられる通貨となっています。

1955年から1971年まで、中国人民元の両替レートは1米ドル=2.4618元に固定されていました。しかし、1971年に米国が後にニクソンショックと呼ばれる政策の大転換を発表。それまで米ドルは所定量の金(ゴールド)との交換を認めることでその価値を保証してきましたが、交換が一時停止されることになったのです。

これを機に、主要国の多くは自国の通貨に適用していた固定相場制を廃し、変動相場制へと移行しました。需要と供給に応じて為替レートが変動していくという現行のスタイルに変わったのです。

変動相場制に切り替わってから、米ドルの価値は急激に低下していきました。中国政府はその影響を抑えるため、1973年から「通貨バスケット制」を採用しました。

「通貨バスケット制」とは、自国通貨を複数の外貨のレートに連動させるというものです。複数に分散して連動させることで、特定の通貨の相場変動がもたらす影響を緩和させられるというメリットがあります。

その後も中国人民元の管理体制は二転三転し、1997年のアジア通貨危機(アジア諸国の通貨価値暴落)後は「ドルペッグ制」を採用します。「ドルペッグ制」とは、自国通貨を米ドルに連動させるというもの。自国通貨の値動きが荒くなりがちな新興国がよく用いるスキームです。

ところが、中国政府は2005年に「ドルペッグ制」から先述の「通貨バスケット制」に戻し、2008年に再び「ドルペッグ制」に回帰しました。ただ、当然ながら米ドル相場は米国の経済情勢を反映して推移するため、自国にとっては都合が悪い水準に中国人民元レートが達してしまう恐れもあります。

結局、再度の「ドルペッグ制」移行も長続きせず、中国政府は「管理フロート制」を採用しました。これは、中国人民銀行が取引の目安になる基準値を毎朝公表し、それから±で一定範囲の値幅内でのみ取引に応じるという制度です。

中国人民元の特徴

中国には、同国の本土内における取引だけに限定した「オンショア市場(CNY)」と、香港を中心に本土外の取引参加者にも門戸を開いた「オフショア市場(CNH)」という2つのマーケットが設けられています。「オンショア市場(CNY)」では貿易などの実需面の取引しか認められておらず、前述したように変動値幅にも制限が定められています。

これに対し、「オフショア市場(CNH)」は中国当局の規制の対象外となっており、値幅制限もなく自由な取引が可能です。この市場は中国経済の成長と中国人民元の国際化を図るために実施された規制緩和によって設立されました。

以来、「オフショア市場(CNH)」では取引が急速に増加し、マーケットの規模が拡大しています。FXにおける中国人民元の取引も、この市場において行われています。

「オンショア市場(CNY)」で取引されている中国人民元は同国の本土内で流通しているのに対し、「オフショア市場(CNH)」で取引されているものは本土外で流通しています。先に述べたように取引の参加者や規制の有無などが異なっていることから、それぞれのマーケットで成立した為替レートにも違いが生じています。

ただし、両市場におけるレートはまったく無関係に推移しているわけではありません。中国の当局が為替相場への介入の一環で「オンショア市場(CNY)」に対する規制を見直すと、「オフショア市場(CNH)」の相場にもその影響が及ぶ可能性が考えられます。

中国人民元を取引する際のポイント

米ドルなどの主要通貨に対して中国人民元の価値が安くなる人民元安が進めば、同国にとっては輸出面で有利になります。値下げを行わなくても、それと同様の販促効果が期待できるからです。

しかし、輸入する側の不満も募りがちです。かねてより米国は「人民元相場が不当に安く操作されている」と訴えてきました。こうした批判を受けて中国は「人民元の弾力化」という措置を打つことを発表し、極端な介入を手控えるように配慮したようです。

しかし、足元では米中の対立が再び激化しており、米国の中国製品関税引き上げに対抗する格好で、中国が人民元安への誘導を行っていた形跡もうかがえます。関税引き上げで中国の輸出品が割高になった分を、人民元安にすることで相殺しているわけです。

FXにおいて為替差益狙いで中国人民元を取引する際には、こうした背景を理解しておくことが重要となってきます。また、「オフショア市場(CNH)」にも影響を与える「オンショア市場(CNY)」の動きを観察しておく必要があります。

たとえば、中国の当局が望んでいない人民元高が続いていた場合、中国人民銀行が取引の基準値を実勢よりも人民元安の水準に設定するケースが考えられます。無論、「オンショア市場(CNY)」では人民元安が進みますが、「オフショア市場(CNH)」もその動きに反応する可能性があります。

言い換えれば、中国人民銀行による基準値の調整状況を見えていれば、中国人民元相場の方向性を見通すことが可能だということです。

一方、スワップポイントに注目して中長期で中国人民元に投資している個人投資家も多いようです。2020年9月時点で中国の政策金利は4.35%に達しており、日本円のように低金利の通貨を売って、人民元を買うと、両通貨の金利差分に相当するスワップポイントを日々得られるからです。

中国人民元の値動きが大きくなりやすい時間帯

日本の隣国で時差もさほど大きくない(上海と東京で1時間)ことから、中国人民元は東京市場がオープンしている時間帯にも値動きが大きくなりがちです。

特に動きやすいのは、日本時間で午前10時台でしょう。中国人民銀行が毎朝10時15分(日本時間)に、取引レートの基準値を公表するからです。

もう一つ、上海株式市場の取引がスタートした直後(日本時間で10時30分以降)も大きく動く可能性が考えられます。上海株式市場の推移には中国経済の今後の見通しが反映されやすいからです。

さらに、中国の主要な経済指標であるGDPや中国統計局の製造業PMI(購買担当者景気指数)などが発表されるタイミングも、中国人民元相場が反応しやすいと言えるでしょう。

まとめ

他の主要国通貨と違い、中国人民元は完全な変動相場制を採用していません。中国政府の意向で相場がコントロールされており、そういった点の観察も必要となってくるのが他の通貨との大きな違いです。

とはいえ、スワップポイントは大きな魅力だと言えそうですし、国際的な決済でも今後いっそうの普及が見込まれるのも確かでしょう。いきなり取引にチャレンジするのが不安なら、まずは中国人民元相場の推移を観察することから始めてみるのも一考です。