FXのスリッページとは? スリッページ対策が重要な理由とその方法とは?

スリッページ(slippage)は直訳すると「滑ること」や「ズレ」、「遅れ」などを意味し、FXの取引では自分が希望した取引レートと実際に約定したレートにかい離が生じる現象のことを意味しています。こうした事態が発生する理由やそれを防ぐ方法についてわかりやすく説明しましょう。

スリッページとは?

スリッページは希望の取引レートと実際の約定レートに格差が生じる現象を意味し、ストリーミング注文などを用いている場合に発生することがあります。ストリーミング注文とは、自分が取引したいレートを指定する指値注文と、取引の成立を最優先してレートを指定しない成行注文の中間に位置づけられ、株式の取引などでは用いられておらず、FX特有の売買方法です。

FXの取引画面では、Bit(売値)とAsk(買値)のリアルタイムレートが表示されています。表示されているレートで買いたいと思ったらAsk(買値)の欄、売りたいと思ったらBit(売値)の欄をクリック(もしくはタップ)して注文を進めていくのがストリーミング注文です。

つまり、表示されたレートで売買したいという意思表示を行う注文で、後述する設定を行っておけば、発注直後に相場が大きく動いてしまった場合は約定しません。しかし、その設定を行っていなければ、相場の推移次第では自分がクリック(もしくはタップ)した金額とは異なるレートで約定してしまうケースが出てきます。

これがスリッページと呼ばれる現象です。成行注文を発注した際のリアルタイムレートと約定したレートに違いが生じることをスリッページだと説明しているケースが見受けられますが、大きな誤解だと言えるでしょう。

なぜなら、そもそも成行注文では、希望の取引レートを指定しておらず、リアルタイムのレートと約定レートが異なりうることを承知のうえで取引を行っているからです。これに対し、ストリーミング注文では表示されたレートで売買したいと考えているわけですから、想定外のズレ(スリッページ)が発生すると、自分が思い描いていたトレードの戦略に狂いが出てしまうことを意味します。

なお、レートのズレと言えば、スプレッドのことを連想する人がいるかもしれません。こちらはBit(売値)とAsk(買値)におけるレートのズレを意味し、トレードを通じて投資家が負担することになる手数料分に相当します。

スリッページ対策が重要な理由と、スリッページを減らすための方法とは?

スリッページが発生しやすいのは、相場が急変した局面や取引量が著しく減って流動性が低下している局面です。また、FX会社や証券会社によってもスリッページの発生率に違いが見られます。

FX会社や証券会社は、顧客が出した注文をインターバンク市場(金融機関向けの外国為替市場)へ仲介する役割を務めています。そして、各社でインターバンク市場のどういった金融機関とやりとりを行っているのかが異なります。

複数の金融機関とやりとりしているところは、顧客の注文が約定するスピードもおのずと速くなります。そもそも仲介している時点でリアルタイムの取引レートとの間にタイムラグが生じるうえ、約定のスピードが遅いとなおさらズレが拡大しやすくなります。

こうしたことから、スリッページが比較的発生しやすいところと発生しにくいところに分かれてくるわけです。

つまり、しょっちゅうすべるようなFX業者は約定力が弱く、逆にあまりすべらずに約定するFX業者は約定力が強いということになります。スリッページの発生率を公開しているケースもあるので、あらかじめチェックしておくといいでしょう。

わずかなズレならともかく、大きなスリッページが発生してしまうと、利益を追求するうえではそれだけ不利になってきます。たとえば、米ドル/円に105.500円で買い注文を入れたのに約定レートが105.530円だったとしたら、3.0pipsのスリッページが発生したことになります。

105.500円で約定していれば105.510円まで円安が進んだ時点で1.0pipsの差益が発生しているのに対し、105.530円の約定ではまだ2.0 pipsの差損を抱えている状態です。こうしたハンデはずっとつきまといますし、1pipsはたかが0.01円とはいえ、10万通貨を取引していれば1,000円のビハインドを背負っている計算になります。

こうしたことから、不本意なスリッページを防ぐように然るべき対策を打っておくことが重要です。その回避方法やオススメの設定については、次で詳しく説明しましょう。

スリッページの許容範囲はどのくらいに設定しておくのが無難なの?

ストリーミング注文では、自分にとって不利な方向にスリッページが発生した場合に、その価格変動の許容限度幅をあらかじめ設定できるようになっています。FX会社や証券会社によって初期設定の数値には違いがあるので、自分自身が許容できる変動幅に設定し直しておくといいでしょう。

たとえば、「0.0〜9.0ポイントの間で設定」などといった条件が提示されているので、その範囲内で希望の幅を選びます。このケースの場合、0.0にするとスリッページを一切許容しないという設定になります。

スリッページ幅をゼロもしくは狭く設定しておけば、希望のレートは、それにできるだけ近いレートで取引できますが、約定に至る確率はおのずと低下します。取引の成立を優先させる場合は広めに設定しますが、その際には設定の最大限までスリッページしたケースも念頭に置いたうえで取引に臨むべきです。

なお、自分にとって有利な方向に相場が変動した場合には、あらかじめ設定していたスリッページ幅にかかわらず取引が成立するようになっています。

スリッページの許容幅をどのくらいに設定するのが無難なのかについては、トレードのスタイルや折々の相場情勢によって異なってくると言えるでしょう。まず、スキャルピングのように1日の中で何度もトレードを繰り返す場合は、1回当たりに狙える値幅はどうしても限られてきますから、0.3ポイント程度まで許容幅を狭くしておかなければ、かなり不利なポジションを建ててしまうことになりかねません。

これに対し、数日〜数週間といったスパンで取り組むスイングトレードであれば、5.0ポイント程度の許容幅にしておいても、スリッページによるズレを十分に挽回できる利幅を追求できそうです。また、米国雇用統計のように注目度の高い経済指標の発表直後にはスリッページが発生しやすいので、そのタイミングでどうしてもエントリーしたい場合には許容幅を広げておくことになります。

まとめ

スリッページとは、ストリーミング注文などで発生する誤算で、発注時のリアルタイムレートと、実際の約定レートにズレが出てしまう現象のことです。あまりにも大きくかい離すると、非常に不利なトレードを強いられてしまいますから、スリッページの許容幅を適宜調整するように心掛けましょう。