FXの取引を法人口座で行うメリットとデメリットとは?

FXの取引は、個人名義の口座で行うのが一般的でしょう。しかし、法人(自分で設立した会社など)の名義でFXを取引することも可能です。法人口座を選んだ場合のメリットとデメリットについて解説します。

FXの取引を法人名義で行うメリットとは? 節税できるってホント?

個人口座でFXの取引を行う場合、レバレッジの倍率は25倍が上限となっています。これに対し、法人口座ならもっと高いレバレッジの取引が可能です。

しかも、法人口座ではさらに様々なメリットを享受できます。特に魅力的なのは節税面で、日本の税制において法人は個人よりも優遇されています。

個人と比べて法人は、経費として計上できる対象が広くなっています。法人名義で契約を結んでいれば、インターネットの通信費や電気代なども経費として認められますし、PCも減価償却を行うことが可能です。

また、法人名義で取引を行っていれば、当然ながらFXで得たスワップポイントや為替差益は会社の収益として扱われます。自分や家族がその法人の役員に就任し、FXの利益を役員報酬として支払っている形式にしたうえで一定条件を満たしていれば、その人件費(役員報酬)も法人の経費に計上できます。

役員報酬に対しては所得税が課されますが、個人事業主には認められていない「給与所得控除」を適用できます。その結果、大幅に課税所得額を減らすことが可能です。

一方、法人名義でFXを取引していると、幅広い対象との「損益通算」が可能となります。「損益通算」とは、損失と利益を相殺することです。

個人口座の場合は、FXで得た利益と株式投資で発生した損失を相殺することは認められていません。税制上、それぞれの利益や損失は別の分類の所得とみなされているからです。

しかし、法人に対する課税(法人税)を計算する際に、個人の所得税のように収入(所得)を分類して個別に算出するような方式は用いられていません。すべての収入を合算して「損益通算」を行ったうえで、生じている利益に対して課税が行われます。つまり、その点においても個人名義のケースよりも節税を図ることが可能なのです。

さらに、法人化してFXを取引すると、赤字を繰り越せる期間も長くなります。個人の場合も「青色申告」を選択していればその年に発生した赤字を翌年以降に繰り越すことが可能ですが、最長3年という制限が設けられています。これに対し、法人の場合は10年にわたって繰り越すことが可能です。

このように、法人化による節税効果は非常に大きいと言えます。たとえ従業員が自分だけであっても、法人格を取得していれば法人に対する税制が適用されます。

FXの取引を法人名義で行った場合のデメリットや注意点は?

法人化した場合のデメリットについて触れる前に、所得税と法人税における税負担の違いについても述べておきましょう。

たとえば年収5,000万円(課税所得4,000万円)以上の個人に課される所得税の税率は45%(2020年4月1日現在法令等)で、住民税と合計すれば最高で55%にまで達します。ところが、法人税の実効税率は所得400万円以下が21.421%で、400万円超〜800万円以下が23.204%、800万円超が33.585%となっています(東京都のケース)。

もしもあなたが専業トレーダーで、FXにおいて年間5,000万円以上の利益を稼いでいたとしたら、法人化しているか否かで税負担が大きく変わってくるのです。法人名義なら他にも収益があったとしても33.585%の課税で済むのに対し、個人名義ならFX以外に収入がなくても55%もの税金が徴収されます。

明らかに所得税のほうが法人税よりも税率が高くなるわけです。こうした点も個人取引との大きな違いと言えるでしょう。

では、FXの取引における法人化のデメリットとしては、どのようなことが挙げられるでしょうか? その一つは、法人の設立には相応の費用が発生することです。

新会社法の施行で最低資本金制度が撤廃され、資本金についてはわずか1円でも株式会社を設立できるようになっていますが、法務局で定款の認証や設立の登記といった手続きを行う際に、手数料や印紙代、登録免許税を負担することになります。その手続きを税理士や司法書士などに代行してもらった場合は、その謝礼も必要となります。

もう一つのデメリットは、設立後も法人特有のコストがかかってくることです。法人は社会保険への加入が義務づけられており、その保険料の半額を会社側が負担する必要がありますし、赤字決算でも地方自治体に税金(均等割)を納めなければなりません。もっとも、会社側が負担している社会保険料の半額は、法人の経費に計上できます。

さらに言えば、法人の確定申告書を作成するのは容易でなく、自力では無理なら専門家の助けを借りることになります。そうなると、税理士への謝礼というコストも発生します。

そして何より、先述したように400万円以下の法人税率は21.421%ですから、所得が少ない場合は個人の所得税(同取得水準なら5〜20%)よりも税負担が重くなる点には注意が必要です。

法人化に向いている人とは? 法人化を検討する際の留意点は?

では、FXで年間にいくら以上の利益を稼いでいたら、法人化したほうが有利になるのでしょうか? そのタイミング(目安)については、年間500万〜600万円が分岐点と言われています。

しかし、もっと少ないケースでも、法人化するメリットがあると説く専門家もいます。反対に、利益が900万円を超えると所得税率が33%になって法人税率の23.2%を超える年間900万円が分岐点だと指摘する声もあります。

結局、他の取得の状況や家族構成なども関わってくるので、一概な判断は難しく、ボーダーライン上の人は無料相談などを利用して専門家から助言を求めるのが無難です。一方で、課税売上高が1,000万円を超えていれば、大いに法人化を検討したほうがよさそうです。

なぜなら、消費税の納税義務が発生するためです。「対価を得て行われる資産の譲渡等」に該当しないため、為替差益は消費税の対象外となっていますが、FX以外にも収入を得ている場合には、その取引にかかる消費税を納める必要も出てきます。

とにかく、専業トレーダーはもちろん、兼業の人も着実に利益を稼いでいるなら、法人化を検討したほうがいいでしょう。

ただし、会社員(サラリーマン)が法人化を検討する際には、就業規則で兼業が禁止されていないかどうかをきちんと確認しておくべきです。公務員については、個人的にFXの取引を行うことは可能ですが、副業は原則として認められておらず、法人化してその役員などに就任することはできません。

法人化の方法については、株式会社と合同会社のどちらかを選択でき、後者のほうが費用負担はやや少なくなっています。法人化の手続き自体は、先に述べたように法務省法務局で行います。

定款に記載する事業目的に関しては、先々で様々な節税に活用する可能性も念頭に置き、FX以外で思いつく事業プランも列挙しておくのが賢明です。なお、FXにおいては略称ではなく、外国為替証拠金取引や外国為替取引といった文言を用いましょう。

まとめ

日本の税制では個人よりも法人が優遇されており、経費の計上をはじめとする様々な節税が可能となっています。FXの取引でまとまった利益を稼いでいるなら、法人の設立と法人口座への移行を検討するといいでしょう。